PROJECT CROSS TALK02

ばね事業 板ばね拡販プロジェクト座談会

営業、設計、研究開発が一体となった
グローバル市場への挑戦

PROJECT
CROSS TALK02

ばね事業 板ばね拡販プロジェクト座談会

営業、設計、研究開発が
一体となったグローバル
市場への挑戦

PROLOGUE

100年に一度の変革期にある自動車業界。より安全・快適で、CO2排出量の削減、脱炭素社会の実現にも貢献する次世代のモビリティを目指して、自動運転化、EV化が加速しています。こうした自動車の進化のためには、自動車を構成する部品の進化も必要になります。三菱製鋼がトラック、トレーラーなどに提供する板ばねにも、さらなる軽量化、高機能化が要求されています。また、激しい企業間競争を勝ち抜くためには、満足度の高い品質・コストの製品を、お客様のグローバル戦略に合わせて供給することも必須となります。三菱製鋼では「素材からのものづくり」という強みをいかしながら、営業、設計、研究開発が一体となり、無限の可能性が潜む板ばね市場の開拓を推進しています。

写真左から

岡本 太地 DAICHI OKAMOTO

営業本部 ばね営業部 ばね第二グループ 

客先からの要求を社内の技術陣へ展開するとともに、スケジュール、費用などの交渉にあたる、プロジェクトの推進役。

栗田 紘平 KOHEI KURITA

千葉製作所 技術部 設計グループ

客先との技術的な窓口となりながら、設計→試作→評価を繰り返し仕様要求に合ったばねを開発する

木野 文尋 FUMIHIRO KINO

技術開発センター 研究第一グループ

高度な試験設備、材料評価設備を駆使した製造方法の改良、開発などを通して、板ばねの軽量化技術を研究する

プロジェクトの背景

自社の強みの相乗効果が期待できる領域にフォーカス

岡本
板ばねは三菱製鋼の強みである、特殊鋼材事業とばね事業の相乗効果が期待できる領域です。しかし今までは、営業・技術・資材などの各部門が独立して仕事を進めていたため、十分に力を発揮できていませんでした。そこで、各部署を横断する形で板ばね事業の専門チーム、板ばねプロジェクトを発足させて、受注拡大につなげていこうとしています。新しい組織体制の下、お客様が求める板ばねをスピーディに形にする力が高まっていると感じています。
栗田
私たち設計の役割は、お客様の依頼に基づいて板ばねを設計し、試作を繰り返し、量産につなげていくことにあります。従来までの技術で対応できない品質が求められた場合は、技術開発センターが蓄積している素材や製造技術に関する知見を提供してもらい、求められる仕様の実現に取り組みます。こうした営業や技術開発との連携が、板ばねプロジェクトによって活発化しています。
木野
私が所属する技術開発センターでは、板ばね製品全般に利用できる材料技術や加工技術の基礎研究を幅広く行っています。私たちに求められるのは、板ばねの設計や製造に関するデータを蓄積し、新製品開発にいかすこと。加えて「将来の板ばねには、こんな技術が必要になるだろう」という予測の下、従来にない新しい材料や加工方法を追求することも重要なミッションです。

乗り越えるべき壁

国境も、部署の違いも越えてスピーディな開発、生産体制へ

岡本
営業担当の課題は、お客様が望む機能とコストの両方を満たすことです。お客様の新車発売やモデルチェンジに合わせて、新規ビジネスを獲得するには、機能面で競合他社より優れていることはもちろん、コスト面でもお客様に満足してもらわなくてはいけません。私たちは、設計部門や技術開発センターのメンバーに相談して、「新しい加工法を採用することで、軽く、低コストでありながら従来と同等以上の性能の板ばねをつくる」といった考え方で、お客様のニーズに応える提案を目指しています。
栗田
板ばね製品の課題としては、製造拠点がインドネシアにあるということです。新しい板ばねをつくるにあたっては、開発→試作→評価のサイクルを繰り返して、完成度を高めていきます。こうした一連の流れが、設計と製造が離れていることにより、かつては思い通りに進められないことがありました。それが板ばねプロジェクトの発足により、国境も部署の垣根も越えて情報が集まりやすくなり、開発・設計と製造の連携が順調に高まってきています。
木野
私も栗田さんと同じように、新技術を使った新製品の開発、製造を海外拠点で進める難しさを味わいました。たとえば試作を依頼した際に、情報が正しく伝わらず、私の意図とは異なる作業が行われてしまったことがありました。同様の失敗を繰り返さないよう、私は現地での作業のポイントを正確に伝えられるように指示書のフォーマットを見直すなどの対策を取りました。こうした取り組みを積み重ねることで、グローバルな製品開発力がより強化されてきています。

プロジェクトから得たもの

未知の領域への挑戦をやり遂げてビジネスを獲得できた

栗田
これまでで最も印象に残っているのは、板ばねとしては初の試みとなる加工技術を自分の担当した設計に適用した時のことです。ある案件において極めてシビアな軽量化とコスト低減の要求に対応するため、技術開発センターで研究していた最先端の加工技術の導入に挑戦しました。設計にあたっては、板ばねの耐久性に関わる応力計算などにおいて、従来の業務知見より高いレベルの数字を扱わなくてはならず、かなり翻弄されました。それでも最終的には、何とか目標となる条件をクリアし、お客様からの技術承認をもらい、受注につなげることができました。
木野
栗田さんが取り組んだ新しい加工技術は、私がメインで任された開発テーマではありませんでしたが、試験データの取りまとめなどでサポートさせてもらいました。技術開発センターでは常にいろいろな開発案件が動いていますが、私は自分の担当業務以外にも積極的にアンテナを張るように心掛けています。そうすることで、自分の蓄積にもなりますし、先々のためにもなると思うからです。栗田さんの板ばねに使われた試験データについても、高い関心を持って見ていました。
岡本
木野さんや栗田さんたち、設計や研究開発部門の成果があってこそ、私たちは先進的な板ばねをお客様に提案できます。新規技術へのチャレンジの成功もさることながら、営業担当としては受注に成功し新規開発した製品や、設計変更を施した製品の量産がスタートして売上が立った時に、最も嬉しさを感じます。

プロジェクトがもたらした変化

ビジネスの推進体制が変化したことで、組織も個人も進化した

岡本
板ばねプロジェクトが始まってから、私たちのビジネスの進め方は大きく変化してきています。プロジェクトの狙い通り、各案件についての社内の情報共有が急ピッチで進展しています。自分が担当する案件以外で開発された新技術の情報もスピーディに入ってくるようになり、「三菱製鋼全体としてのお客様への提案力が強化されている」と実感しています。
栗田
そうですね。私も、板ばねプロジェクトの旗印の下、既存の組織の垣根を越えた開発推進体制が取られるようになったことで、軽量化・コスト低減といった顧客ニーズに応える力がアップしたと感じています。また国内-海外という拠点の垣根も低くなりました。開発・試作段階でインドネシア工場での立ち合いをより積極的に実施するようになるなど、グローバルな連携が活発化したことは、私の仕事をより面白くしてくれています。
木野
板ばねプロジェクトという体制になることで、「営業や設計のニーズが、研究開発部門に伝わりやすくなった」と思います。そして、それに伴って私自身は、技術開発を担う責任の重さを再認識して業務に取り組むように。「製品の軽量化やコスト低減につながる新しい材料や製造技術をもっともっと開発して、三菱製鋼の持つカードを増やしていきたい」という気持ちが高まりました。

次のプロジェクトに向けて

開発と営業活動の好循環をつくって自動車の進化に貢献する

木野
板ばねが使われる商用車のEV化が進めば、形状や重量、寿命に対する要望のレベルがもっと高まっていくでしょう。すると私たちは、これまで以上にいろいろな技術開発を加速していかなくてはなりませんし、未来をとらえた技術開発が重要になってくると思います。今はほとんどの場合が、お客様の欲しい板ばねがあって、それに対応する新技術を開発するという流れです。けれども将来は、お客様に欲しいと言われた時に、すぐに「この技術でできますよ」と言えるように、先回りした開発ができるようになる必要があります。
栗田
岡本さんとはお客様への提案活動で、一緒に中国に出張したことなどもありますが、引き続き力を合わせてお客様の課題解決を目指していきたいと思っています。プロジェクトチーム一体となった活動が拡販につながり、そこで得られた利益をいかして、さらに次世代に向けた研究開発が進められていく。そんな好循環が生まれるといいなと思います。
岡本
生産拠点の海外展開の進展、それに伴う部品調達の現地化など、お客様の事業のグローバル化によって、板ばねに対する要求も一層厳しくなることが見込まれます。しかし板ばねは、間違いなく自動車に欠かすことのできない製品です。三菱製鋼ならではの「素材から製品までの一貫したものづくり」と、営業・技術が一体となった板ばねプロジェクトの強みをいかして、さらに軽量化やコスト低減を継続し、自動車の進化に貢献していきたいですね。