コーポレート・ガバナンス(企業統治)

当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質の確立を重要課題と認識し、競争力のある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。このためには、コーポレート・ガバナンスを充実させて迅速かつ合理的に経営の意思決定をし、チェック機能を確保することが重要と認識しています。

コーポレート・ガバナンス体制

当社は、社会的責任を果たし、社会から信頼される企業を目指すため、「経営理念」、「三菱製鋼グループ企業行動指針」及び「三菱製鋼グループ行動規範」を定めるとともに、より実効的なコーポレート・ガバナンスを追求しその充実に取り組むことを「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」に規定し、「取締役会制度と監査役会制度の機能強化」と「経営会議による業務執行の審議並びに法令遵守・危機管理強化」に重点を置く体制としております。
また当社では、2022年度に新設した指名報酬委員会の運用の高度化を進めてまいりました。具体的には、指名領域では、役員の人材要件、選任基準及び手続の明確化、さらに役員候補者の選抜、育成、評価を通じた後継者育成計画の取り組みを充実させました。報酬領域では、役員報酬をこれまでの業績のみの指標ではなく、非財務指標であるESGの指標も導入し、役員報酬制度の改革を図りました。今後も当社では、さらなるコーポレート・ガバナンス体制の拡充に向けて、取り組みを進めてまいります。

当社のコーポレート・ガバナンス強化の歴史(2015年以降)
2015年・ガバナンス委員会の新設
・「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」制定
2016年・投融資委員会の新設
・取締役会実効性評価の開始
・取締役会事業所開催の実施
2019年・SR活動開始
・リスク管理委員会の設置
2021年・取締役会における社外取締役比率1/3以上へ
・取締役の任期を2年→1年に短縮
・執行役員制度を導入
・サステナビリティ委員会を新設
・政策保有株式の削減(純資産に対する比率15%→4%へ)
2022年・SR活動の強化(社外取締役の参加)
・新たに女性役員2名が就任したことで、女性役員比率20%
・指名報酬委員会の新設
2023年・ガバナンス委員会から社外役員連絡会へ役割・名称を変更
コーポレート・ガバナンス体制図
コーポレート・ガバナンス体制図

取締役会のバランス、多様性、規模に関する考え方

取締役会は、必要最小限の規模とし、意思決定を迅速かつ効率的に行える体制とすると同時に、国際性を含む多様な経験・知識・能力を備えたメンバーで構成することで、取締役会の適正規模と多様性の両立を図っています。
また、社外取締役を3分の1以上選任することにより、業務執行の決定における公平性及び透明性を確保しています。
また当社では、各取締役・監査役に期待される知識・経験・能力等を一覧化したスキルマトリックスを以下のとおり作成し公表しています。

スキルマトリックス
スキルマトリックス

役員の報酬について

(1)役員の報酬等の額の決定に関する方針

目標達成(100%)の場合…
基本報酬100に対して賞与25、株式報酬20の割合で支給し、加えて賞与については業績改善度を反映し支給しております。

取締役の報酬等の額の決定に関する方針は取締役会において決定します。社外取締役を除く取締役の報酬等の額は、役位に応じた基本報酬(固定)のほか、賞与及び株式報酬としています。

社外取締役については、各社外取締役の幅広い知見・経験に基づく助言を経営に反映するために就任いただいているものであり、その役割・職務内容を勘案し基本報酬(固定)のみとしています。
取締役の個人別の報酬等の内容については、代表取締役社長執行役員がその具体的内容について委任を受けるものとし、当該権限が代表取締役社長執行役員によって適切に行使されるよう、取締役会が社外取締役を過半数とする指名報酬委員会へ諮問をし、同委員会の答申を経る体制としています。

(2)報酬に係る指標、指標の選択理由及び報酬額の決定方法

賞与

指標単年度の業績指標(連結営業利益額)及びESG指標(CO2排出量等)達成度及び前年実績からの業績改善度を反映した支給率並びに個人評価を加味して支給額を決定。
指標を選んだ理由着実な年度収益向上への意欲を向上させるとともに、中期経営計画で基本方針の一つと位置付けているESGに関する目標達成への意欲を向上させるため。

株式報酬(非金銭報酬)

中長期的な業績向上及び企業価値の増大へのインセンティブを高めることを目的として、BIP(Board Incentive Plan)信託と称される仕組みを導入しております。

指標及びその理由事業規模拡大、収益性及び資本効率性の向上並びにESGの達成度が中長期的な企業価値向上に資すると考え、中期経営計画目標値に対する連結売上高、連結営業利益、ROEの達成度並びにESGの達成度を指標としております。(2023中期経営計画目標値)
最終年度(2025年度)連結売上高:1,850億円、
連結営業利益:110億円、ROE:8%
ESG指標(CO2排出量等)
支給方法中期経営計画終了時または退任時に、毎年役位に応じて付与されるポイントに指標の達成度に応じて0%~200%の範囲で変動する係数を乗じたポイントの50%に相当する株式を交付し、残りについては株式の換価処分金相当額を支給しております。

取締役会の実効性分析・評価

当社は、コーポレート・ガバナンスの向上に向け取り組んでおりますが、取締役会が実効的にその役割を果たしているかを毎年、各取締役及び各監査役による評価に基づき取締役会の実効性の分析・評価を行っております。

(1)2022年度の実施状況

昨年度に引き続き、主に「取締役会の運営方法」「取締役会の審議」「取締役会の構成」等の観点で以下の評価プロセスにより評価を実施いたしました。

  • 社外取締役を含む全取締役及び社外監査役を含む全監査役に対するアンケート調査による自己評価を実施
  • 社外取締役及び社外監査役(非常勤)のみ個別インタビューを実施
  • 取締役会及びガバナンス委員会においてアンケート調査結果に基づき議論
  • これらの自己評価、議論等を踏まえ取締役会の実効性評価の結果を取締役会において決議

以上のプロセスによる取締役会評価の結果、2022年度の取締役会については、その実効性に関する重大な懸念等はなく、取締役会の運営方法、取締役会の審議、取締役会の構成等、概ね適切であり取締役会全体としての実効性が確保されていると評価しております。
なお、前年度(2021年度)の実効性評価において認識した課題への取り組み状況並びに今回認識した課題及び今後の改善策は下記のとおりです。

(2)前年度(2021年度)の実効性評価において認識した課題への取り組み状況

【2021年度課題】

  1. 1中期経営計画進捗及びサステナビリティについて、取締役会における予定議題とするとともに新中計の策定については、社外取締役の理解を深めるような運営上の工夫をし、取締役会における議論の充実を図る。
  2. 2ガバナンス委員会から独立した指名報酬委員会の設置を検討していくことで取締役会の監督機能の強化を図る。
  3. 3人材育成計画を着実に実施することで、経営幹部を育成し必要な資質を備えさせることで中長期的な企業価値向上を図る。

【2021年度課題への取り組み】

  1. 1中計とサステナビリティについて決算月を除いて原則毎月議論し、取締役会において議論の充実を図りました。また、中計とサステナビリティを含む重要課題については、社外取締役の理解を深めるよう取締役会資料の事前説明を実施し議論の充実を図りました。
  2. 2指名報酬委員会を設置の上、毎月開催し、指名領域や報酬領域におけるプロセスの高度化を図りました。
  3. 3人材育成計画を策定し当該計画に基づく各種施策を着実に実施しております。

(3)今回(2022年度)認識した主要な課題に対する今後の対応

  1. 1新規事業等将来の発展に資する議論の充実を図ります。
  2. 2人材マネジメントにおいて、採用強化・リテンション強化・戦略的人材配置等、具体的な各人事施策に落とし込んでいきます。
  3. 3従来のガバナンス委員会では社外役員間の情報共有及び指名報酬について諮問していましたが、指名報酬委員会を設置し指名報酬機能を委譲したことにより、再度、ガバナンス委員会の役割や名称について検証します。

今後は、これらの改善策を随時実行し、その結果を評価しさらなる改善につなげていくことで、より実効性のある取締役会を目指してまいります。

内部統制に関する重点項目

取締役会制度と監査役会制度の機能強化

取締役会はグループ全体の経営戦略を方向付ける場であり、意思決定の迅速化に留意しつつ経営の基本方針策定、法令・定款で定められた事項、その他経営に関する重要事項の決定及び取締役の業務執行の監督をしています。また、社外取締役及び社外監査役が取締役会に出席し、業務執行の決定における公平性・透明性を確保しています。
その他に、より実効的なコーポレート・ガバナンス追求のため取締役会の下部機関である社外役員連絡会において独立社外取締役間の情報交換と認識共有等を実施することで、取締役会の監督機能を強化しています。

経営会議による業務執行の審議ならびに法令遵守・危機管理強化

取締役、監査役、執行役員等を構成メンバーとした経営会議を毎週定例的に開催し、重要な業務の執行、法令遵守、危機管理について審議し、対応しています。

財務報告に関する内部統制

内部統制委員会及び取締役会は、2022年度の財務報告に係る内部統制について一般に公正妥当と認められる評価基準に準拠して有効であると評価しています。また、監査法人からも当該評価は適正であるとの監査意見をいただいています。

内部統制システムの強化

「内部統制に関する基本方針」について毎年見直しを行い、取締役会で決議するとともに、その運用状況を事業報告において開示しています。