人権尊重の取り組み

基本的な考え方

当社グループでは、多様なステークホルダーとのエンゲージメントによる関係構築の前提として、人権の尊重を重要なテーマと認識しています。「三菱製鋼グループ行動規範」で「三菱製鋼グループは、人権・人格・個性と多様性を尊重し差別を行ってはならない。また、三菱製鋼グループは、従業員を尊重し安全で働きやすい職場環境を確保するとともに、企業活力の維持・向上を図らなければならない。」と定め、個人の能力が最大限に発揮できる職場環境づくりを進めています。
なお、人権尊重の対応については、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」の3本柱(保護・尊重・救済)に基づき、取り組みの強化を進めております。
さらに今後は、EUの企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)やIFRSサステナビリティ開示基準(ISSB基準)など、国際的な規制動向に留意し、グローバル企業としての責任を果たしてまいります。

保護

人権方針の制定や体制整備、社員への教育を行うことで、当社の活動が人権侵害を引き起こさないための仕組みを構築しています。

人権方針

当社グループは経営理念に「人を活かす経営」を掲げており、人権の尊重が事業活動の基本であるという考えのもと2022年に三菱製鋼グループ人権方針を制定いたしました。同方針は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき作成しており、人権に関する最上位の方針として位置付けています。
さらに2025年には人権方針を改定し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、OECD多国籍企業行動指針、ILO中核的労働基準との整合性を強化しました。これにより、国内外のステークホルダーに対して、より透明性の高い人権対応を推進しています。

三菱製鋼グループ人権方針

三菱製鋼グループは、経営理念に「人を活かす経営」を掲げています。人権の尊重が事業活動の基本であるという考えのもと、「三菱製鋼グループ企業行動指針」、「三菱製鋼グループ行動規範」、「サステナビリティに関する基本方針」に基づき、「三菱製鋼グループ人権方針」(以下、「本方針」)を定めました。三菱製鋼グループ行動規範に明記している、あらゆる人権を尊重する基本姿勢に基づき、本方針を人権に関する最上位の方針として、事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重する責任を果たしていきます。

  1. 1人権尊重に関連する国際規範並びに法令の尊重及び遵守

    三菱製鋼グループは、人権尊重が企業の重要な社会的責任であることを認識し、「国際人権章典」(「世界人権宣言」、「市民的および政治的権利に関する国際規約」並びに「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」)、「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」、OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針等の人権に関する国際規範を支持・尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき人権尊重の取り組みを推進します。また、三菱製鋼グループは、事業活動に関わるすべての国・地域の法規制を遵守します。

  2. 2適用範囲

    本方針は、三菱製鋼グループのすべての役員および従業員(正社員、契約社員、派遣社員を含む)に適用されます。また、サプライチェーンを構成する取引先を含むすべてのおよび、ビジネスパートナーの皆様にも、本方針を理解し、支持していただくことを期待します。

  3. 3人権尊重の責任

    三菱製鋼グループは、事業活動を通じて直接または間接的にステークホルダーの人権に影響を与える可能性を認識し、その課題解決に取り組んでまいります。

    1. 1差別およびハラスメントの禁止
    2. 三菱製鋼グループは、国籍・人種・民族・宗教・肌の色・年齢・性別・性的指向・障がいの有無等を理由とするあらゆる差別を禁止します。また、労働者に対する暴力、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、精神的もしくは肉体的な抑圧、いじめ、言葉による虐待など、非人道的な扱いやハラスメントが一切ない職場環境の維持に取り組んでいます。これらの要件に対応した懲戒処分と是正措置を明確に定め、役員および従業員に周知し、適切に対応します。
    3. 2強制労働・児童労働の禁止
    4. 三菱製鋼グループは、強制・児童労働のすべての形態の利用や、あらゆる形態の人身売買の利用を禁止します。また、事業活動において、子どもの権利保護に向けて「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、社会貢献活動を通じて子どもの権利改善に向けて取り組みます。
    5. 3健康で安全に働ける労働環境の提供を含む責任ある労働慣行
    6. 三菱製鋼グループは、健康で安全に働ける労働環境の整備を徹底します。労働時間は、事業活動を行う国・地域で適用される法令に定められる上限を遵守し、さらに過重労働の防止に努めています。
      労働者に支払われる報酬は、最低賃金、時間外労働、および法令で義務付けられている福利厚生に関連する法律を含め、適用される賃金に関するすべての法令を遵守します。
      また、同一価値労働に対して同一賃金の原則に準拠した賃金設定を適宜行ってまいります。
    7. 4結社の自由及び団体交渉
    8. 三菱製鋼グループは、事業活動を行う国・地域で適用される法令に従い、労働者の結社の自由・団体交渉の権利を尊重しています。

    その他一切のステークホルダーの国際的に認められた人権について、自らの事業活動において当該人権への負の影響が実際に生じた場合または潜在的に生じる可能性がある場合には、その防止・軽減に努め、是正に向けて適切に対処してまいります。
    また、三菱製鋼グループのサプライチェーンを構成する取引先およびビジネスパートナーが人権への負の影響の発生に関与している場合には、人権を尊重し侵害しないための適切な対応をとるよう働きかけを行うなど、間接的にも人権侵害に加担ないし関与することがないよう努めていきます。

  4. 4人権に関するガバナンス・推進体制

    三菱製鋼グループは、代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委 員会」にて人権課題についての対応方針、施策等を議論の上、本方針の遵守状況と人権 尊重の取組内容について定期的に取締役会に報告し、取締役会の監督のもと人権尊重 の取り組みを推進します。

  5. 5人権デュー・ディリジェンス

    三菱製鋼グループは、人権尊重の責任を果たすため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従って、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、事業活動やサプライチェーンにおける人権への実際の又は潜在的な負の影響を特定・評価し、当該負の影響の防止・軽減を図るための取り組みを継続的に遂行します。また、その取り組みの実効性を確認し、継続的に改善するために、実施した取り組みの効果を追跡評価し、人権尊重の取組内容を適時・適切に開示していきます。

  6. 6是正・救済

    三菱製鋼グループは、事業活動を通じて人権に対する負の影響を引き起こし、助長し、その他負の影響に関与したことが判明した場合には、原因究明と再発防止に向けて適切な手段を通じて、その是正・救済に取り組みます。また、是正・救済に向けて継続的に実効性のある相談体制を維持・発展させていきます。

  7. 7ステークホルダーとの対話や協議

    三菱製鋼グループは、事業活動による人権に関する負の影響の特定・評価及び対応措置等を含む人権尊重の取り組みについて、影響を受けるステークホルダーの視点で評価・見直しをすることが重要であると認識しており、ステークホルダーや社外有識者との対話・協議を継続的に実施していきます。

  8. 8情報開示

    三菱製鋼グループは、人権尊重の取り組みに関し、ホームページ等に適切に開示していきます。

  9. 9人権方針の周知浸透・教育

    三菱製鋼グループは、本方針を社内に浸透させるため、必要な手続の中に本方針の考えを反映するとともに、役員・従業員に定期的に人権に関する研修の実施を継続し、人権を尊重する文化の醸成に努めていきます。

本方針は、三菱製鋼株式会社の取締役会において承認されています。

2022年11月8日制定
2025年 8月7日改定

推進体制

人権尊重の取り組みは、経営層のリーダーシップのもと、人権推進チームが関係各部門と連携して推進しています。具体的には、社長執行役員が議長をつとめるサステナビリティ委員会への付議・報告及びサステナビリティ担当役員の監督のもと、定期的なリスクレビューと改善活動を推進しています。

社員に対する教育

近年、企業活動における人権侵害リスクへの関心が高まる中、社員一人ひとりの人権意識向上を図ることを目的として、ビジネスと人権とは何かを学ぶ研修及びダイバーシティ推進 研修を実施しています。国内グループ企業全社員を対象に、全員が人権リスクを発生させる可能性があることや、多様性が進む中お互いの違いを認め合うことを、定期的に認識できるよう仕組み化することで、人権リスクの予防及び誰もがいきいきと働ける職場づくりに取り組んでいます。また、2023年度以降継続している個人面談及びハラスメント教育も、コンプライアンス研修の一環として、国内の全従業員を対象に継続して取り組んでおります。

研修別受講率
(%)
テーマ20232024
アンコンシャス・バイアス79.1
障がい者の合理的配慮51.9
ビジネスと人権75.0
介護と仕事の両立63.0

尊重

当社グループは、主に特殊鋼製造及び自動車部品製造事業におけるグローバルなサプライチェーンを有する企業として、人権尊重を企業活動の根幹に位置付け、国連のビジネスと人権に関する指導原則、ILO条約等に基づき、人権リスクの特定、評価、対応を体系的に実施しています。

リスクの特定

当社は、事業活動における人権への影響を適切に把握・管理するため、国際的な人権規範を参照しながら人権リスクの特定プロセスを構築・実施しています。具体的にはステークホルダーとの対話、リスク評価の実施、国際規範との照合を通して次のようなリスクに対して適切な対応を講じております。

リスク種別対象グループ対策
労働災害社員・サプライヤー等第三者の社員法令に基づく安全衛生管理体制及び災害防止対策
紛争鉱物労働者・女性・子供RMIのCMRT/EMRT調査
強制労働・児童労働労働者・女性・子供サステナブル調達ガイドライン(サプライヤー向け行動規範)の遵守
若年労働者雇用における法令遵守
労働条件の悪化社員・サプライヤー等第三者の社員労働時間・賃金適正化、労働環境改善に対する労使協議と目標管理
差別・ハラスメント社員・女性・外国人労働者
サプライヤー等第三者の社員
内部通報、ハラスメント窓口、均等報酬・昇進機会の監視、研修・啓発活動、言語・文化的障壁への配慮
土地権利侵害先住民族、地域社会地域住民との対話・協議(環境影響)

人権デュー・ディリジェンス

2022年度に当社及び国内子会社、2023年度に海外の子会社を対象として、グループ全社の人権デュー・ディリジェンスを実施しました。国内外とも重大なリスクがないことを確認しましたが、一部においてハラスメント事案の発生、設備の不備、海外慣習に起因する採用前の各種個人情報の確認手続き等が確認されました。これに対しては教育研修の実施でリスク低減に取り組んでいます。

また、お取引先さま向けには、2019年度以降CSRアンケートという形で上記と同じく強制労働・児童労働を含む人権リスクをはじめとするデュー・ディリジェンスを実施しております。2024年度は、人権リスクにおける潜在的なリスクを持つ各種原料の購入先である主要なお取引先さま17社を調査対象として選定し、対象全社の調査を実施しました。調査の対象範囲は、RMIに基づく紛争鉱物調査及びCSRアンケート対象企業と合わせ、一次サプライヤーからの仕入金額総額の約7割にあたります。当該調査においても重大なリスクはありませんでしたが、人権尊重の取り組み頻度などが今後の課題であることが確認されました。対策として、サステナブル調達ガイドラインを策定し、今後とも取り組みをお願いしたい項目を明記しました。次年度以降はガイドラインの周知を図るべく説明会開催を検討しております。

一次サプライヤー三菱製鋼
グループ
(連結)
強制労働差別
児童労働安全衛生
結社の自由責任ある調達
団体交渉権汚職・腐敗
 環境への配慮企業倫理
情報セキュリティ先住民・地域社会

サプライチェーン調査結果

救済

救済措置メカニズムの構築

人権リスクの予防・軽減措置強化のため、当社は既存の内部通報制度・ハラスメント窓口に加え、既存窓口ではアクセスできなかったサプライヤーの社員の方からのご相談も対象とする当社ウェブサイトを活用した人権相談窓口の設置を進めています。