人的資本経営の推進

当社グループでは、社員一人ひとりが持つ力を伸ばし、会社の強みとしていく人的資本の活用が、当社グループにとって持続的成長の必須条件であると認識し、人材育成とダイバーシティ、職場環境の改善を重視し、社内におけるサステナビリティ対応として取り組みを進めています。

人的資本経営の方針と取り組み

当社グループでは、2023年5月に公表した中期経営計画の4大方針の一つとして、「人材への投資」を掲げ、「人材への投資」を通じて、生産性向上とイノベーションを実現してまいります。

人を活かす職場環境づくり

  • DX・業務断捨離による『タイムパフォーマンス』の高い組織へ変革。
  • 有給休暇や育休制度の拡充による『働きやすい環境』づくりの促進。
  • エンゲージメントサーベイによる従業員満足度把握の強化と改善。

人材の多様性がもたらす柔軟な創造力

  • 女性の工場勤務を可能とする職場づくり、女性活躍推進を目的とした研修。
  • 積極的な中途採用を通した、多様な知見や考え方の活用。
  • 現地採用者の本邦勤務などグローバルな人材交流の実施。

人を活かす仕掛けづくり

  • 社員の働きがいやチャレンジ精神を高めるための評価制度の見直し(評価のフィードバック強化、社内スタートアップ制度の浸透)。
  • 人材要件を踏まえたリスキリング機会の提供(生涯学習の支援)。
  • 資格取得支援制度の充実を軸とした自律型人材の育成(人材の質向上)。

人材への投資増加額(教育、資格取得支援、福利厚生充実)中計3年間で5億円

人的資本経営に向けた取り組みについて

当社グループでは、人的資本の取り組みに当たって、2つの専門プロジェクトチームを組成。当社の人的資本に係る戦略の策定や従業員のニーズ把握に向け、各テーマについて、協議・検討を行っています。

1. 事業戦略に連動した人財戦略検討チーム

企画部門を中心に組成し、中期経営計画等とも連動した、人材戦略の策定・評価等を行う。

2. 従業員総活躍ストーリー検討チーム

従業員の活性化やモチベーション向上のための環境整備を主目的として、人事部門を中心に複数部署からメンバーを選定し組成。

具体的な取り組み施策

  1. 1エンゲージメントサーベイの実施

    「人を活かす職場環境づくり」や「人を活かす仕掛けづくり」の実現に向けては、従業員が今よりもさらに当社で働く意義を感じ、モチベーション高く成長を遂げることが「人を活かす」ことにつながり、そのためには「自社に対する満足度の向上」が重要な要素であると考えています。
    昨年8月に、当社として初めて「エンゲージメントサーベイ」による社員の期待値と評価の可視化を実施しました。今後も、毎年定期的に実施を行う予定です。
    今回の結果を受け、社員のエンゲージメント向上を図れる推進策を実行してまいります。

  2. 2タウンホールミーティングの開催

    2022年下期に経営トップと中堅社員のタウンホールミーティングを実施しました。
    「離職防止による優秀な人財の確保」、「中堅社員の業務における成果を福利厚生などの施策で還元していく仕組み作り」、「社員一人ひとりのワークエンゲージメントの向上」を目的として、社長・専務が本社及び各主要生産拠点を回り、対面で直接従業員との対話を行いました。
    ミーティングでは積極的な意見交換がなされ、「従業員の生の声」を受けて、インフレ手当をはじめとする手当の拡充や教育プログラムの強化等の育成面のほか、異動を希望する社員への機会提供を目的とした「人事部に直接自己申告できる仕組み」の導入など、人事制度の改善を進めています。

今後も、こうした「従業員満足度の可視化」や「経営トップと従業員との対話」等の取り組みを継続的に実施することで、「人材への投資」を着実かつスピーディに進めてまいります。

働きやすい職場づくり

育児休業制度利用促進

多様な働き方を支援するため育児休業期間の延長や短時間勤務対象者拡大、一時保育利用補助等の制度面の充実に取り組んでいます。また、利用者には育児休業制度や手続き、スケジュールについてまとめた資料を配布、不安を軽減し各種制度が利用しやすいようにしています。
法律の改正もあり、男性の育児休業取得者も増えています。配偶者が出産した男性社員への取得促進や取得者の感想を社内誌に掲載するなど、取得率向上に努めており、従業員にとって多様な働き方が可能となってきています。今後も職場環境の改善や業務効率化推進など、従業員一人ひとりが働きがいを実感できる風土づくりに取り組んでいきます。

育児休業規程

休業期間最長で子が3歳になった年度の年度末まで、繰り下げ可
育児休業を希望しない場合の取り扱い子が3歳まで、申出により時間外労働免除等の措置
子の看護休暇子が小学校6年生まで、1人の場合5日/年、2人以上の場合10日/年を限度
所定労働時間の短縮子が小学校3年生まで、所定労働時間を6時間/日(時間帯は都度調整)
時間外労働の免除子が3歳まで、時間外労働を免除
時間外労働の制限子が小学校就学前まで、24時間/月、150時間/年を限度
育児のための深夜業の制限子が小学校就学前まで、原則深夜労働を免除

ハラスメント対策

2022年4月の育児介護休業法の改正に伴い、「出生時育児休業」(通称:産後パパ育休)の取得推進に向けて、全社員対象にパタニティハラスメント研修を実施しました。
管理職、一般社員とで研修内容を変え、ハラスメントの防止活動に取り組んでいます。

働き方改革

当社は、コアタイムのないフレックスタイム制度を導入しており、メリハリをつけて時間を有効活用することを推進しています。引き続きフレックス職場の拡大やオフィスワークとリモートワークのバランスを取りながら、多様な働き方の実現に取り組んでいきます。

有給休暇の取得

2022年度の有給休暇取得率は、計画年休の設定や休日前後の有給取得を取得しやすくする「プラスONEキャンペーン」の実施により73.4%と前年に比べ大きく向上しました。今後も有給休暇取得率向上を通して、働きやすい職場づくり、従業員の健康増進等に取り組んでいきます。

  • 9~11月の3ヶ月間の休日前後の日を有給取得の推奨日として、期間内に各自が最低月1日取得を目標に「プラスONEキャンペーン」を実施。

多様性の確保に向けて

当社はダイバーシティ推進を、持続的に成長できる強い企業になるための経営戦略の一つとして位置付けています。従業員一人ひとりが、多様な考え方や経験を活かし、持てる力を最大限発揮し、誇りとやりがいを持って活躍できるように取り組んでいます。
女性活躍推進については、女性比率目標(女性従業員:2025年までに15%以上、女性管理職:2025年までに10%以上)を掲げ、女性活躍推進を目的とした研修や、女性社員対象の個別面談を実施しています。当社においては、男女間において賃金体系および制度上の違いはありません。管理職比率や年齢構成差において人材ポートフォリオの偏りに男女差がありますが、女性のキャリアップ研修の効果が出てきていますので継続して取り組んでまいります。

人材教育

企業の持続的成長の源泉は人材であるとの認識から、人材の育成と活用に注力し、成長と自己実現を実感できる企業を目指し人材育成に取り組んでいます。また、当社の求める人材像を明確化し、階級ごとに必要な行動特性を示した「コンピテンシーマップ」の要件水準に沿うための階層別研修、社内風土や意識改革を進める仕掛けづくりや、教育体系に沿った研修を実施していきます。

教育体系(事技系統)
教育体系(事技系統)

若手社員育成に関する取り組み

7年次研修

当社教育体系全体において、新入社員、若手、エルダー、管理職対象の研修は体系化が進捗してきたものの、定例的に開催する中堅層向け研修が確立されていない課題を解決するため、7年次社員を対象に現在の業務内容や今後チャレンジしたいこと等について経営陣に向けての発表会を実施しています。
当該中堅層の士気向上を図るため、今後も継続していきます。

プロフェッショナル人材の育成

技術系対象業務改善発表会

新入社員の技師論発表以降、成果発表の機会が乏しかったため、自職場での取り組み、業務改善の報告を通じ、達成感を得られる機会として、技術系社員を対象とした業務改善発表会を実施しました。各部門の枠を超えた交流の場となるよう、今後も継続して業務改善発表会を実施し、改善意欲向上につなげていきます。

グローバル人材育成

社員がグローバルに活躍するための教育として、赴任前には、語学研修をはじめ、現地でビジネスを行う上で必要な基礎知識習得・異文化理解を目的とした研修を行っています。
また、社員の英語力底上げを目的に、語学研修の支援を行っています。

自己啓発支援

当社は、自己啓発の教育ツールとして、Eラーニングを導入しています。スマートフォンの利用にも対応しており、時間や場所に拘束されず自由に学習することができます。語学学習、メンタルヘルス等のマネジメント系のほか、技術・技能に関する知識やパソコンの実務知識、DX関連など、幅広いカリキュラムの中から任意のコースを選択し受講することができます。受講を促すための継続的な取り組みとして、事務局が定期的にEラーニング通信を発行し利用を促進しています。
また、社員の能力や専門性を高めるための自己啓発支援として、公的資格取得報奨制度を定めています。
社員の成長に必要なスキル取得に向け、対象資格の拡充及び資格取得に対する学びの支援体制を整えており、公的資格を取得した場合は、資格の種類に応じた報奨金の支給を受けることができます。今後も「成長機会の提供」として、従業員の成長を促す基盤整備を進めてまいります。

新規事業創出チャレンジを実施中
研修中の様子
研修中の様子

今年度より、新たな取り組みとして、公募型の研修プログラム『新規事業創出チャレンジ』を実施しています。
本プログラムは、社員が新規事業アイデアを提案し、社内オーディションを通過したアイデアは、ビジネスモデル構築トレーニングやメンタリング(新規事業に関する相談・アドバイス)を受けることで、アイデアの解像度を上げるとともに、事業開発ノウハウの獲得を目指す実践的な伴走型研修プログラムになります。
この取り組みを通じて、社員のスキルアップに加え、新規事業創出を担う人材を育成し、新たなことにチャレンジする企業風土の醸成も図ることで、新規事業創出につなげてまいります。

安全と健康

安全への取り組み

当社グループは、「安全は全てに優先する」という考えのもと、安全で健康的に働ける、快適な職場環境づくりを推進しています。多くの機会によるコミュニケーションを通じてリスク感受性を高め、基本に立ち帰り「初心に帰る」をスローガンに掲げ、安全活動を推進しております。

当社の対策

従来より行っている安全パトロールに加え、国内・海外の全拠点の従業員に安全ワッペンとヘルメット用のシールを配布し、安全活動の啓蒙を図っています。

安全ワッペン
安全ワッペン
三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱安全パトロール(2022年)
三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱
安全パトロール(2022年)
広田製作所安全パトロール(2022年)
広田製作所
安全パトロール(2022年)

災害度数率

災害度数率
  • 休業災害度数率(100万時間あたりの休業災害件数)
    三菱製鋼㈱、三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱、三菱長崎機工㈱の合計でデータを算出しています。

安全担当者会議

グループ会社を含む国内拠点の安全担当者による会議を継続的に開催しており、安全に関する意見を交わし、管理レベルの向上や情報及び問題認識を共有しております。

安全協議会

災害が発生した後には、当該事業部の原因・対策報告に、他事業部と事務局で討論を行い深堀りを行う「安全協議会」を始めました。部署間を超えてコミュニケーションすることで、横展開の強化などを図っています。

各拠点における安全活動の事例

[三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱]玉掛競技会
競技会の模様
競技会の模様

危険な作業であるとともに技術が求められる玉掛け作業(クレーンで重量物を運搬する作業)の技術向上を目的として、「玉掛競技会」に参加しています。チームごとに、合図の仕方や吊り荷の重心見極めなど、日頃行っている一連の基本動作や真摯に作業に取り組む姿勢を披露しました。

[千葉製作所]5Sコンクール
コンクールの模様
コンクールの模様

職場の自主活動推進と5Sを基軸とした基本事項の定着化を図るため、年に3回、5Sコンクールを開催しています。5S活動は全員参加を基本とし、5Sの必要性(目的)を理解することで災害の未然防止と職場の活性化、職場モラルの向上に努めています。コンクールでは、5Sの基本となる「整理」「整頓」を重点取り組みとし、他に「清掃」「しくみ・マネージメント」「意識・行動」「改善」の4項目を加えて審査しました。

[広田製作所]KYTコンクール
コンクールの模様
コンクールの模様

日頃の業務における危険予知能力の向上を目的として、KYTコンクールを開催しました。
テーマをその場で公開し、10分間で危険要因の洗い出し、危険ポイントの決定、実行可能な対策の立案、チーム行動目標および指差呼称項目の決定、指差唱和まで行います。各職場から6チーム計22名が出場し、日頃のKYT活動の成果を披露しました。

従業員の健康

当社は、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが、個人の健康だけではなく、会社のパフォーマンスの向上につながるという意味でも極めて重要であると考え、従業員の健康管理・増進に取り組んでいます。
従業員の健康維持・増進に取り組むため、健康保険組合・各事業所と三位一体で健康施策を検討・実施しています。

健康経営宣言

当社は、「人を活かす経営」を経営理念に掲げ、多様な人材が活躍できるとともに働きやすく活力に満ちた職場環境づくりに努めています。
今後も健康確保のための環境整備を三菱製鋼健康保険組合と連携して行い、従業員の健康の保持増進に向けた活動を推進します。

健康経営方針

  1. 1疾病の予防と早期発見・早期治療

    疾病予防に努めるとともに、健康診断の結果、要再検査/要治療となった従業員への受診勧奨・フォローを行うことで早期治療を促し重症化を防ぎます。

  2. 2感染症予防

    衛生管理を徹底し、従業員の感染症予防に取り組みます。

  3. 3メンタルヘルス対策

    ストレスチェックを通じてメンタルヘルスへの適切な対応を行い、良好な職場環境づくりを推進します。

  4. 4健康増進策

    食生活の改善や運動機会の提供等、健康増進策に取り組みます。

推進体制

人権尊重の取り組み

当社は、「三菱製鋼グループ行動規範」で「三菱製鋼グループは、人権・人格・個性と多様性を尊重し差別を行ってはならない。また、三菱製鋼グループは、従業員を尊重し安全で働きやすい職場環境を確保するとともに、企業活力の維持・向上を図らなければならない。」と定め、人権を尊重し、個人の能力が最大限に発揮できる職場環境づくりを進めています。また、部署横断の専門チームを組成し、人権尊重の取り組み強化を進めています。

人権方針の策定

2022年11月に、「三菱製鋼グループ人権方針」を制定・公表しました。
同方針は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき作成しています。
人権に関する最上位の方針として、事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権を尊重する責任を果たしてまいります。

人権デューデリジェンスの実施

「人権デューデリジェンス」とは、企業が人権への負の影響を特定・防止・軽減し、対処するためのプロセスです。
2022年度に、当社として初めて、国内外の子会社を対象とした、人権デューデリジェンスを実施し、是正が必要な問題はないことを確認しました。
今後は、サプライヤーにまで範囲を広げるとともに、救済メカニズムの構築を進めてまいります。

人権教育の実施

当社では、人権尊重の取り組み強化の一環として、従業員の意識向上と知識習得を目的とした「人権教育」を定期的に実施しています。
直近では、主に以下のテーマを中心に教育を行いました。

  • LGBT研修
  • アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)
  • 障がい者への合理的配慮